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女湯と男湯を見渡せる
番台に座り
エミちゃんは午後4時からのいつもの
水戸黄門をみる。
柿の種を微笑みながら
おいしそうにぽりぽりと口に運ぶ。
亀田のは
ショープだ。
越後のは
ちょっぴりビターだ。とか
そんな事をつぶやきながら。とりとめてFollowerなどいるわけでもない。
印籠が出て、悪党がしずまるころに
母屋からみとちゃんがくる。
「はあい。
エミちゃん、お茶の時間ですよ。番台交代ですう。」
姫君と殿方の脱衣場は仕切りと扉で隔てられているものの、
それらの上部と天井の間は大きく開いていて
あちらとこちら
こちらとあちらの話し声は通じている。
不都合だと思うひとはたぶんあまりいない。
かえって都合がいい。一緒に入店した者同士が帰り時刻なんかを伝え合える。
「今日も、気持ちよかった。」
「おたくと話せて癒された。」
「今日、初めての会話をここでした。」
「あたしなんて帰ったら、テレビとずっとお話しするだけ。」
聞こえてくる声。
この時代
この街
この時